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総司の腕の中で目覚め、朝食だけ作り、屯所を出て、松本の診療所へ出かけた。
「少し待っていなさい」
「はい。ありがとうございます。松本先生」
待合室のような所に通され、雪斗は松本に事情を話し、菊を待っていた。今朝、土方たちにも、菊に会いに行くとは伝えてきた。
伝えた時の表情は、皆良いとはいえなかったが、複雑な表情を浮かべながらもとりあえずは頷いてくれた。
来たのはいいが、拒絶される可能性のほうが高い。それを考えると、少しだけ迷う。この時代に来た時から、雪斗のことを何の疑いもせず一番最初に受け入れてくれたのは菊だった。
「雪斗…」
「あ、どうでしたか?」
厳しい表情で戻ってきた松本は
、表情と同じくらい厳しい声で告げた。だが、言われる前に、結果は何となく、わかってしまった。
「会いたくない。だそうだ」
「…そうですか」
「此処にいる以上、患者の意見を尊重する。無理やり会わせるわけにはいかない」
それが医者としての正しい選択だろう。雪斗は拒まれたという事実に胸が張り裂けそうに痛んでも、いつも通りの笑みを浮かべた。
「…じゃあ、菊姉がいる室まで連れて行ってもらえませんか?無理やり入らないとお約束します」
「それなら…まぁ、よかろう。ついて来なさい」
予想はしていたが、思っていたよりもずっと辛かった。だが、雪斗よりも、きっと菊のほうが辛いに決まっている。
雪斗は、松本に連れられ、菊がいるであろう室の前に来て、松本が去っていくのを見届け、その場に正座をした。
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