---真実---

9/14
前へ
/122ページ
次へ
雪斗は、そっと目を閉じた。唇を噛み締め、襖に額をくっつけ、祈るように囁いた。 「あなたが…新撰組に戻るために、私という存在が邪魔になるのなら、私が消えます。だから、どうか…お願いします。戻ってきてください。あなたの帰りを望んでいる人たちがいます」 ゆきこがやって来る前から、ずっと新撰組を影から支え続けていた菊。誰よりも、彼らを近くで見ていた人。 何の返事もなく、今日はもう無理かと、額を離した時、スパンと目の前の襖が開き、怒りの表情を浮かべた菊がいた。 そして、手を振り上げて、呆然と 菊を見上げる雪斗の頬を叩いた。 「なんでっ…なんでそうやって、すぐに自分が引こうとするのよ!欲しいものがあるんじゃないのっ?そんな簡単に捨てていいのっ?」 「…き、く姉?」 目を瞬かせる雪斗の胸元を掴み、菊は何かを必死に訴えるように、大事な何かを授けてくれるように、口を開いた。 「自分の大事なものを、そんな風に、ずっと手放して、これからも歩いていくのっ!?」 「っ!…で、でも…」 「そんな軽いものじゃないでしょう!重たくても、その重みが、あなたをずっと、ここに留めてくれてるんでしょう?なら、しがみつきなさいよ!」 菊の言葉は、ストンと胸に落ちた。 .
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加