2761人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ寒さが残る3月。
たくさんの人々が足早に通り過ぎる駅の前で、私、畑野 渚はそわそわと辺りを見渡していた。
遅いなあ…。
待ち合わせは6時だったはずだが、今は6時を20分も過ぎている。
今まで時間に遅れてくる事などなかったから…不安が頭を過っていた。
「…メール、してみようかな。」
呟き携帯を開く。
ボタンを操作する指がかじかんでいて、上手く打てない事にも不安になった。
それでも一生懸命メールを打っていたら…。
ポスン。
何かが頭の上に乗っかったのか、急に重くなる。
恐る恐る顔を上げて、安堵に胸を撫で下ろした。
「隆史…」
目の前で息を切らしながら私を見下ろす、私の大切な人。
古賀 隆史。
イケメン教師として生徒に大人気な、高校教師だ。
「ごめんな…遅れてっ…花屋が新人で…」
花屋?
隆史が言った言葉に首を傾げる。
すると、頭に乗っかっていた何かから、ハラハラッと花びらが落ちてきた。
「これ、お祝いだ。フロアチーフ昇進おめでとう。」
「!!」
言葉と共に頭の重みがなくなり、大きな花束が目の前に差し出される。
最初のコメントを投稿しよう!