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止めた思考の中に鈴の音が紛れ込んできた。
いつの間にかテーブルの上にコーヒーが置かれ、その湯気の向こうのドアが開いて一人の青年が立っていた。
薄手のジャケットとジーンズを履き、髪は明るい金色に染めている。長めの前髪から覗く瞳は、この町には相応しくないであろう都会的な雰囲気を持っていた。
最近二つ隣の駅にできた、お洒落でソファーもふかふかでテレビを見ている店員なんかいないような喫茶店の方が格段に似合いそうな彼に、高岡が不躾な視線を送ってしまうのも無理ないだろう。
そもそも高岡が通い初めてから滞在時間中に来客なんて全く無かった。
こんなに客が少なくて困らないのかと思うほど高岡以外の客はいなかったのだ。
あまりにも場違いな彼に驚きの視線を送っていたら、店内を眺める彼と目があった。
少しの間視線を交わし少しの気まずさからそれを外す。
赤の他人と長い間目を会わせる趣味は無い。
根元辺りまで灰になってしまった煙草を灰皿で揉み消し、新しい煙草に火をつけた。
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