始まりのお話

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──どうしてこうなった── 広い広い、ホールのような部屋の中で、明らかに場違いな雰囲気を醸し出す俺は、一人そう思う。 思わず口に出しそうになったが、俺を包み込む荘厳な空気がそうさせなかった。 「……」 右を見れば、100万ドルの夜景と名高いイルミネーションのような天原市の夜景が眼下に広がる。 山の上で、かつ20階という無意味に高い位置からの景色は正に絶景。 ワインを飲みながらだと尚良いんだろうなと、飲んだこともないのに考えてみる。 「……」 くるりと首を回して、左を見れば、総勢80人は居るんじゃないだろうかという、オーケストラ。 素人目に見ても、世界クラスだろうと思える程に綺麗な音を奏で、まるでオーケストラ自体が一つの楽器のよう。 「……」 下を見れば、毛足の長い絨毯が床に敷き詰められ、草原のようにさわさわと揺れている。 絶対に家の布団よりも寝心地がいいと思う。 「……」 首を折って上を見てみれば、天井にはぶら下がるようにして幾つものシャンデリアが吊り下がる。 蛍光灯や電球なんて無粋な真似はせず、全て温かみのある、火を燈した蝋燭。 電気の光に慣れてしまった目には優しく、染み込むようで癒される。 維持費はどれ位だろう、と考えてしまうのは貧乏学生にとっては仕方ないことだろう。 「……」 そして、正面を向く。 心地の好い椅子に座る俺の目の前には、テーブルに置かれた色とりどりの料理。 「美味しそう」なんて言葉じゃ言い表せない程に良い匂いを放ち、見てるだけで涎が出て来る。 料理が一級品ならば食器も一級品で、薄手の皿には綺麗な細工がしてあり、隣に佇むスプーン類は、キラキラと貴金属のように輝く。 ……これ、絶対に銀だよ。 だって輝き方が違うもん。 「俺は高級品だぜぇっ!」 とか言いそうなくらい輝いてるもの。
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