第二章 3月9日 高田 智子

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「二手に別れて探索しよ!  きっと何かあるよ」  智子は強引に夏美と義明を二人きりにしよう作戦を決行したのだ。  ちらと夏美の方を見ると、すでに義明と何やら話している。  どうやら上手くいったようだ。  それからはしばらく三人で行動した。  この崖の下には、普段肝試しでよく使う謎の影があると光彦が教えてくれたので、智子は恐る恐る四つん這いになりながら下を覗き込んだ。 「暗いし何も分からんよ」  ぶうたれる智子に苦笑する光彦と卓。  よく夏になると若者たちの間で行われる肝試しツアーは、森の入口から見て右方の散歩コースと散策コースの丁度真ん中にある獣道を真っ直ぐに進む。  するとそのうちやや開けた空間と高い岩壁に突き当たる。  その壁が肝試しの最終地点なのだが、偶然なのか何なのか、そこには人間が苦しんでいる様な暗い影が染み付いているのだ。  周囲の色とは明らかに違うその影は、夜の闇よりもなお暗く苦しみに染まっている。  実際はただの染みかもしれないが、とりあえずその人間の染みが気味悪がられ、肝試しの執着地点とされているのだ。  起き上がると智子は、井戸を調べたいという光彦らと共に井戸を覗いてみた。  懐中電灯で中を照らしてみたが、どうやら底が見えない程深いらしい。 「ロープでもあればなぁ」 「いやいや、流石に入るなら昼だろ」 「よし卓、行ってこい!  ……お前のボディじゃ無理だな」 「おわっ、ひでーなぁ」 「あはは。  でもよ、やっぱりこの井戸は採掘の為じゃないと思うんだよなぁ……近くに民家があったとしか考えられん」  確かに。  そうでないとこの位置の井戸は不自然過ぎて説明がつかない。 「ま、ないんだからないんだろ。  それよりもう帰ろうぜ」 「そうだな。  お前ももう空腹だろ」 「……んなことねぇよ」  光彦と卓がつまらないコントを繰り広げてる中、智子は辺りを見回しふと、夏美と義明の姿が見えない事に気が付いた。 「あれ?  夏美と三田君がいないんだけど……」 「え?」 「本当だ」  どこに行ったのだろう。  まさか二人であんな事やこんな事を……いやいや、夏美に限ってそれはない。  あいつは意外と奥手だ。  じゃあ何かあったのか?  智子が色々と思案していたその時だ。  突然自分を呼ぶ夏美の声がした。  三人に緊張の影が走った。  夏美の声がどことなく緊迫した声だったからだ。
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