えいじの場合①

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 桜が舞う、肌寒い春の季節。 体育館の外はきっと、爽快な晴天が4月を包んでいるだろう。 ああ、今日から中二か。 中二は三階だっけ。 面倒臭ぇな……。 なんて考えながら、挨拶と言う名の長ったらしい教頭の常套句を聞いている。みんな私語やらあくびやらだらだらし放題。いつまでも春休み気分でいないで、気を引き締めろっての。  そんなことを思いながら、始業式も終わりに近付く頃。 がらがらがらっ! と何かを擦るような大きな音が響いて、体育館の扉が開いた。 「おおお、遅れてごめんなさあああいっ!」  マイクロフォンより体育館中にこだまする、幼い男の大きな大きな声。 その声は残響となりいつまでも響き渡っていて、外の太陽の眩しい光で黒く染まる人影を映した。 扉の向こうに、誰かいる。 よくよく見てみると、茶色い髪で、ちょっとぽっちゃりしてて、大きな瞳で、背が小さくて、なんだかどこかで見覚えが……。 あれ、アイツ……。 「ちょ、静かにしなさいっ」 「佐々木は一番前の列だから」  小さく聞こえる、大人たちの声。あわてて先生たちがそのチビを列に並ばせてる。 あまりのうるささに驚いて話をさえぎられた校長先生が再び話を始めていく。 誰だよ。 こんな時間に、騒がしいやつ。  俺は、変なのに関わって迷惑被るのは嫌だ。 そう思いながら、縁のないメガネをクイッと上げ直した。  
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