5/9
前へ
/358ページ
次へ
私自身は彼の意識を引かなかったけれども。 レジ横のパン山積みの3枚のトレーは、彼の意識をダイソンかって位に吸引していて。 店内の客は、彼と私だけ。 それは幻だって、思ってくれないかしら。 然り気無く隅に移動してはみたもののーー。 視線を感じる。 刺さる視線で穴でも空いて萎まないかな、私。 無理か。 詰まっているの、空気じゃなくて脂肪だし。 「有難うございましたぁー」 可愛らしい店員さんのアニメ声に見送られ、彼は小さな緑色の袋を手に、店を出て行った。 私には目もくれず。 細身の長身を、店の隅から見詰める私に見せ付けながら。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

251人が本棚に入れています
本棚に追加