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「……ああ。まだまだ満足できない。もっと早く……強くなりたい」
「決まりだね。現実世界ではちゃんと体は安まってるから安心して。零はただ経験を得るだけ。精霊魔導士の特権だよ」
ほー、便利な世界だな。ここ。
それなら合宿が終わっても毎晩のように鍛錬ができる。どうにか進級する前にはみんなに追い付けるかもしれない。
念のため言っておくが、この合宿はあくまでも強くなるためのきっかけでしかないと俺は思ってる。この短期間であいつ等と同等になるなんてはなから考えちゃいない。
「……真面目に相手しろよ、夜宵」
「分かってる。あたしの中では零が一番なの。みんなに追い付けないなんて、やだよ」
どこか悲しく、辛そうに言う夜宵。誰よりも、それこそ俺と同じくらいに俺の無力さを嘆く。
しかし……い、一番かぁ……。
「……。……な、なあ。気持ちは嬉しいんだけどさ、気恥ずかしいからそう言うのはなるべく止めてくれ」
「どういうの?」
「いや……一番だとか、好きだとかってホイホイ言うなって事」
「事実だもん」
「だから、恥ずかしいから心の中で言え!」
「……私はあなたの事をこんなにも愛しているのに!!」
「おまっ、それ人の前で言うなよ!?」
こいつ……合宿中にまたテレビで変なドラマとか見てやがったな。何でもかんでも直ぐに真似しやがって。
振り付けまで完璧だなオイ。
「……まあいいや。つーかさっさと」
「まあいいや!? そんな……何て冷たい人っ!」
「まだやるか」
「ダーリンッ!」
「やめろバカ!」
……と、まあ最初は不安だったが残りの一週間の鍛錬は朝昼晩のぶっ通しだった。正確には夜はちゃんと寝てるけど。
主に此処では精霊術を鍛え上げ、全体的に予想以上の成果を上げられた。
そして、俺達の強化合宿は最終日を迎える。
衝撃の事実を知る事になる……あの日を。
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