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遠くから見ている限りでは声こそ聞こえないものの、賛成派と反対派で言い合っているのは確かだ。
髪を乱す程の強風が途切れ途切れに吹き、思わず顔を背けて目を瞑る。
「…………」
ふと、視界の隅に捉えたのは金髪。
1人で少し離れた位置に立ち、何を思っているのか宙を見つめてぼーっとしていた。
灰夜の様子が明らかにおかしいと決定付けたのは休み明け。
覗きしたりアリスと揉めたりした一週間前の夜以降、灰夜が纏う雰囲気が変わった。今までのように騒がしいくらいに元気溌剌、と言えば確かにそう見えなくもないが、どこか違う。
疑問に思い、幾度か「何かあったか?」と聞いてみても、いつも返ってくるのは「別に普通だって」だけ。
俺はその態度に妙な距離感を感じてしまって、いつもみたいにふざけて突っ込んだりできないまま一週間。
「……灰夜、お前はどう思う? 瑠巳ちゃんの提案」
「……ん? ……あぁ、良いんじゃね? 最後だし」
「……そっか」
別にどうでもいい、と言う捉え方も出来るんじゃないか。上の空のような、そんな答え方だと思った。
何か事情が、隠し事があるのは確かだ。ただ、人には言いたくない事だってあるわけで、今の灰夜が正にそれだ。
大概、何度聞いても同じ答えが返ってくるのはそういう事なんだ。無理に探りを入れる必要はない。
幾らか風も収まってきた頃、どうやら向こうの話し合いも終わった模様。四人が戻ってきた。
姉さんと黒守は何やら呆れている。あの様子だとサバイバルは決行みたいだ。
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