12.衝突の最終日

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 と言うか、これはもうビンタの次元を越えている。頬への一撃で数十メートルも普通は吹っ飛ばされないだろう。 「ぶっふぉっえぶっ!!」  上げたくて上げた訳ではない奇怪な声を出しながら一回二回と砂浜をバウンドし、頭から埋もれた。  痛みより衝撃が勝っている。頭がぐわんぐわんと揺れて何が起こったのか一瞬理解出来ないほどに。  こ、この威力は……。 「っと……加減するどころか魔力強化までしてしまったな」  殺す気か。しかもMFBは互いにまだ発動していない。  因みに先輩の筋力は姉さんとほぼ同格である。要するに凄い。 「全く……何を悩んでいるのか知らないが、これはお前たちの為の鍛錬なんだ。気持ちを入れ替えろ馬鹿者。そんな事では初戦で無様な結果に終わるぞ」 「…………」  端から見ればそう読まれても驚く事はないんだろう。今の俺は。  だからと言ってこっちの気も知らないでなどと言える訳がない。先輩の言ってる事が間違ってはいないからだ。  いや、この二週間を共に過ごした感想だと、この人は決して間違った事を言わなさそうな気がする。  素直で真っ直ぐ過ぎ。気位も高く、とにかく自信に満ち溢れた存在だ。  そんな人間に喝を入れられれば嫌でも目が覚める。 「そう……ですね。すみません」 「分かれば良し! 直ぐにでも戦えるように夜宵を起こしておけ」 「はい!」  因みに夜宵には夜間に精神共鳴世界での鍛錬に付き合って貰っているため、昼間は寝かせておいてある。  俺は現実では眠ってる訳だが、精霊の方はそうはいかないらしい。だが今日ばかりは起きてもらわねば。  そう思いつつ、心の中でぐっすりと眠っているであろう夜宵を起こしにかかった。 ―――――――――――
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