12.衝突の最終日

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――――島内部・林道。  幅の広い肩へ、一粒の水滴が落ちた。  僅かな触感に空を仰ぐと、林と林の隙間から覗く曇天より少しずつ降り出した雨が彼の蒼い左目に映る。 「やっぱ降って来たかぁ~。機器類置いてきて良かった」  その隣で真南瀬 瑠巳は安心したように胸をなで下ろしている。きょうもパーカーにスカートの子供じみた組み合わせだ。  彼女の言う機器類とは、主にゲーム機器の事だろう。  ただ、珍しく持ってこなかったのは単に天候を予測したからという理由だけではないんだろうと、斬桜は予想していた。 「はー、ちゃちゃっと片して帰ろ……」  一見、いつもと同じように気力を感じさせない雰囲気を纏っているかの様だが、この二週間で毎日のように彼女の様子を窺って鍛錬をしてきた斬桜は自分の中に一つの確信を得ている。  合宿開始から、この自分達の担任教師は日を増すごとに気を張りつめていた。そして今も、まるで何かを警戒しているかのように碧色の双眸を僅かに見張らせているのだ。  更に、一週間前の浴場での会話。  外の様子だの気配だのと、これらからまるで狐子と灰夜が狙われているんだと安易に推測できる。  真相を知りたいのは山々だが、初めから何も言わないと言うことは聞いても教えてはくれないんだろう。  そんなこんなで斬桜はこの一週間、自分の師匠役にどう切り出そうか迷っていた。 (……いや、違う)  話すも何も、空気に敏感な彼は一週間前から既に嫌な予感を抱えている。 「つーかさ、あんたならもう気付いてんじゃない? 斬桜」 (……来た)  その性格からは予測出来ないほど、彼女は人より勘が鋭いのを斬桜は既に熟知していた。
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