12.衝突の最終日

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 他の団体戦メンバーなら何の事か理解できなかっただろう。それほどに唐突で、直線的な問い掛け。  言い逃れする理由もないため、肯定の意味を込めて沈黙を通した。 「もし可能性があるとしたら、今日が最後さ」  流石に聞かずにはいられず、素早くメモ帳にペンを走らせる。 〝灰夜君の事ですよね〟 「別にあたしはいいんだけどさ、覗きとか女からしたら最低のクズ野郎だから」  彼女にはバレていたんだろう、これにも流石に頭を下げた斬桜だった。 「……狐子を狙うのは裏研究会……本当はバーサーカーって言うんだけどさ、それの一部だけ。本来の目的が獅子堂だって知ったのは例の襲撃から間もないよ」 〝彼を狙う理由を知るための、囮ですか。寮長は〟 「要するにね。やり方はともかく、本人も承諾してるから問題ないよ」  何もかも大丈夫だから安心しろと、そう思わせるくらいの余裕を見せる瑠巳。  しかし斬桜……一生徒としてはどうしても解らない事がある。 〝何故、強化合宿だと偽って僕達を巻き込んだ〟 「…………」  その文に僅かな怒気が含まれている事は直ぐに理解できる。普段は感情の起伏がないような、食えない性格をした斬桜にしては珍しい状態である。  それでも彼女はその余裕を持った表情を一切崩すことなく、 「何故もなにも、あたしは別に偽ってなんかないしね。ただあんた達にこの合宿の真の目的を言わなかっただけ」  淡々と口を開く。 「……ほら、始まるよ」  気付くと、少しずつ強さを増す雨の中にやや紫色を帯びた靄のようなものががかかり始めていた。
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