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「待てよ…今、手当てしてやるからな。公一!包帯と湯を持ってこい!」
公一と呼ばれた若い男は、「はいよ」と言うと何処かに行ってしまった。
公一の父親だろう男は、未だ血が止まらない患部を持っていた布で止血し始めた。
「………うっ、」
「痛いだろうが我慢してくれよ…。……あんた、名前は?」
「……岸…咲月」
「咲月か…いい名だ。俺は勇作だ。あいつは俺の息子で公一ってんだ。ひとつ、よろしく頼むよ。……それはそうと、何でお前さんは河原に居たんだ?」
男…勇作さんは止血をてきぱきとこなしながら聞いてきた。
河原…?
河原って…あの女性が死んでいたところか?
「…女性が倒れて……死んでいた」
「!……ああ」
勇作さんは一瞬だけ動きを止め、また止血を再開させる。
躊躇うように口を開いた。
「実はな…昨日、あの河原で人が斬られたんだ。辻斬りによって」
「辻…斬り」
「有名な輩だよ。河上彦斎と言ってな。冷静沈着、相手が女子供でも容赦しない…非道な奴さ」
話によると、他にも何人かその男によって斬られているらしい。
俺も日本史の授業で名前を聞いたことがある気がした。
「あんたはそれに巻き込まれたんだ。本当にびっくりしたぞ。女が死んでる横であんたが倒れてんだから…もう駄目かと思ったが…助かってよかった…」
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