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泣きそうな顔をする勇作さんを見て、自分がよく生きていたことを実感する。
辻斬りが起きたのは昨日だったらしいから、それは余計にだった。
その後、公一さんが戻ってきたので応急処置をしてもらった。
―――――――
「辻斬りかー…」
ぼんやりと河原を眺めながら呟く。
昨日の惨事が嘘のように、のどかな河川敷。
所々には、まだ血が付着しているが。
女性の死体には御座のようなものがかけられていた。
隙間から覗く手は青白く血に染まっている。
「……。」
大きな石に腰を下ろす。
腹の傷はまだ痛むが、先刻よりは幾分かましになっていた。
俺は今まで起きたことを思い出す。
幕末に来てしまったこと。
辻斬りのこと。
俺を斬ったあのポニーテールの男が、勇作さんが言う"河上彦斎"という奴なのか。
今何日の何時で、これからどうすればいいか。
…そして真理のこと。
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