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「先輩少し休みましょうよ」太陽が真上に差し掛かっている。
舗装されていない林道を頼りない軽自動車で走ること2時間。
そこから熊笹の生い茂る道?を何時間歩いたことだろう。
「もう少しだ。GPSが正しければあと30分くらいのはずだ。」
東山は、倒木の枝を払いながら、美香に答えた。
GPSだと目的の場所は、目の前に拡がる急斜面の上ということになる。
「先輩、私もう無理です。こんな崖登れません。」
登山経験のない美香には無理もないことだろう。
美香はその場にうずくまってしまった。東山の背中も汗と昨夜の雨で濡れた熊笹のせいでびっしょりになっていた。
東山も一息つこうと、腰の高さはある目の前の岩を登りきった。
振り返って登ってきた崖を見下ろすと、涼しい風とともに、青々とした緑がどこまでも続いているのが見えた。
岩の上に腰を下ろして休もうとすると異物があるのを感じた。
東山は腰を動かし、手で岩の上の細かい砂を払いのけた。
そこには見慣れた東京都と書かれた赤い杭が埋め込まれていた。
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