プロローグ

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会議室の中は古い書類の匂いとと地下食堂の排気口が近くにあるのか、 古い油であげたから揚げの匂いが混じり、蒸し暑さを強調していた。 東山と日置美香は入口を入ってすぐの席に座るように促された。  東山が検査の立会に呼ばれたのは2日前のことであった。  会計検査院の調査期間ではないが、提出された書類に混じって戦後間もないころの財務省と東京都との契約書の写しと古い地図が見つかったことからだ。  東山はその契約書に関する書類を本日持参するように指示されていた。 「東京都の管財課の方にも本日お越しいただいたのは、昭和21年に大蔵省と締結した土地交換の契約について確認させていただきたいと思いましてお呼びさせていただきました。 それでは、事前にお願いしていた書類を拝見させていただきます。 日置美香は、青い封筒の中から、細かい数字の記載されたA3の用紙を調査官に提出し、説明をはじめた。 「依頼のありました財政融資資金の貸付金に係る書類ですが、書類の保存年限が30年であり、関係書類は廃棄済みとなっていました。  本日お持ちしました書類は、当該土地交換に関係すると思われる土地整備資金の償還年限表です。 
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