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(戦わずに数を減らす作戦が…)
鈴梨は絶望の色を全面に押し出した。このままやりあっていたら途中でへばるのが目に見えている。
(どうすっかな…グングニルなしの全速力で片っ端からなぎ倒すか…?でも肝心なグングニル使う前に体力が切れそうだし…)
そんな事を思考していると、会場のざわつきと共に黒いロングコートを着た男が前に出てきた。
「…次はあんたか…?」
本能で何かを感じた鈴梨は、思考を中断し、先程の倍以上の注意をもって深く相手を観察する。
「"廻る試練"…輪廻 カルマだ。お前の名は?」
カルマと名乗る男は、鈴梨に名前を問う。
「俺は…真雪 鈴梨だ…よろしく頼むぜ!!」
鈴梨は言い終わると同時に仕掛けた。
「速いな」
それをなんなく避け、鈴梨と距離を取り、
「身体変化、疾風(はやて)。」
ボソリと呟くと、驚異的な速度で一気に距離を詰める。
「うぉッ!?」
とっさに反応した鈴梨は、跳ぶのと同時に体を捻り、男の放った突きをギリギリ回避した。
「これが見えるか…。」
男は意外と言った顔をして、掠めた拳を確かめる。
(先に攻撃して正解だったな…、いきなりあの速度じゃ対応が遅れてたぜ…。)
鈴梨は切れ目の入った服を見て冷や汗を流した。
「なら、これは追えるか?CP(コンバットパターン)…ソニック」
男が言い終えた直後に鈴梨の視界から消える。
「クソッ!!」
鈴梨は悪態をつくと軽く後ろへ跳ねる。
すると、先程まで鈴梨がいた位置に、衝撃波を伴う程の速度で空を殴り抜くカルマが居た。
「これも見えるのか、面白いな…お前。」
カルマは体制を低くし、構える。
「ここからが本番だ…。追いついて見せろ。」
そう言って再び視界から消えるカルマ。
「警戒さえしてりゃあな!!」
鈴梨は右を殴り抜く。
カルマの右ストレートと、鈴梨の左の拳が激突し、地面を軽く割るほどの衝撃が発生する。
「余裕で捉えられるぜッ!!」
鈴梨は即座に左脚で蹴りを放つ、
「それは俺とて変わらんさ」
カルマも蹴りを紙一重でかわし、一回りして殴りかかろうとしていた鈴梨の顎目掛け蹴り上げる。
「クッ!!」
その蹴りは鈴梨を捉えたが、鈴梨は不自然な横回転をしながらカルマから離れ、若干の冷や汗を流しながら着地した。
「ほう…俺の蹴りのダメージを殴る際の回転の力を使い完全に流し蹴りの勢いだけを利用して距離をとったか…」
カルマは全く手応えのなかった自分の脚と鈴梨を見比べ、うっすらと笑みを零した。
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