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辺りは相変わらずの瓦礫の山、その中を淀んだ冷たい風だけが吹き抜けている。
ただ一つ違っていたのは、先程までそこに当たり前のように存在していた、ワルプルギスの夜の姿が消えていたことだった。
その時ほむらは、全てを理解した。
また、自分は救えなかったのだと……
たった一人の、大切な存在を救うことができなかったのだと……
「まどか……」
ほむらの目から、涙がとめどなく溢れてくる。
それは彼女の頬をつたい、温かく美しい雫となって、埃にまみれた瓦礫の街に、ぽつりぽつりと落ちていく。
破壊され尽くしたこの廃墟の街にあって、それこそが唯一の美しいものであった。
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