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初めて彼の者を見た時に気が付きました。
彼の者は眠っておりました。
深い深い眠りについておりました。
八つの頭と十六の目が、何処を見るとでもなく草の上に置かれていました。
蛇なので瞼がないのだろうとは思いますが、瞬きも出来ないままで目は乾かないのでしょうか。
心配になります。
あたしが彼の者の瞼になれれば、どんなに嬉しいことでしょう。
今まで随分と粗末な人生を送ってきた命だったけれど、あたしは彼の者と供にいる為に生まれて来たのだと。
そう気付けば、全てが変わりました。
世界が生まれ変わったのかあたしが生まれ変わったのか、もしくはそのどちらもでしょうか。
醜い醜い男共を慰めたり、そこから逃げ出して見ず知らずの家族の手伝いをしたり。
とても馬鹿馬鹿しい人生ではありましたが、全ては後の幸福の為の布石だったのだと、ようやく気が付きました。
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