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「娘。顔を上げよ」
そしてふと上げられた顔の美しさときたら。
漆色の大きな目に小さな鼻。
頬は桜に染まり、唇には小梅。
器量の良さは、我が姉上殿よりも上ではないだろうか。
これは都合が良いと、我は老婆を見やる。
「我は神である。八つの頭を持つ蛇の妖怪を、殺してやろう。代わりにその娘は貰い受けるが、構わぬか」
「おお……願ってもない申し出……! その娘でよければどうぞ持って行って下さいな。その代わり、必ず大蛇を殺して下さい、殺して下さい。アレは娘の仇なのです」
我は応と答え、娘を見た。
安心したのだろう、娘は目を細めて我を見ていた。
それは、安心から来る笑みにしては、なんとも妖艶なものであった。
この娘が手に入るのならば、神による神殺しも悪くはない。悪くはない。
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