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ある時、娘が一人、私の寝床へ迷い込んだ。
私は十六の目でじっと見据えた。
彼女は小さな目を見開け、私を見ていた。
やがて「ひえぇ」と小さな悲鳴を上げて逃げていった。
一度私の姿を見たのだから、すぐにでも出て行くだろうと思いきや、人間は未だ上流に住んでいるようだった。
悪さをしない限りは追い出すつもりはない。
私はまた、山に異変が訪れるまで、昏々と眠り続けた。
ふと、強い存在に目が冴えた。
どうやら私以上の存在がこの山を訪れたようだ。
私は礼儀を重んじているので、こちらから挨拶へ向かう事にした。
何よりも、彼方はかなりの力を持っているので、此処まで来てもらっては動物達が脅えてしまうのが気がかりだった。
しかしどうだろう、私を迎えてくれたのは、鮮やかな着物に身を包んだ小娘一人。
傍には樽が置いてある。
小娘は齢二十にも満たぬ見てくれだったが、「大蛇様」と呼ぶその声はあまりにも色めいている。
不釣合いではあったが、小娘は、私を見て柔らかく笑んだ。
ありえない事だが、十六の全ての目が見られている感覚に陥った
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