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「大蛇様。あちらの滝の傍にある茂みに、貴方様を討ちにおいでなさった神様が隠れておりまする」
其処にいらっしゃるのは分かっていた。
いくら身を隠したとしても、大きすぎる力は隠しきれない。
しかし、私を討ちに来たとはどういう事だろうか。
私は、ヒルル、と舌を出して入れた。
「さて、この酒樽の中には一杯の川水が入っております。どうかお願いです。この水を飲み、一寸だけでよろしいので、眠る振りをしてはくださらないでしょうか」
小娘の考えている事が謀りきれずに、私は舌を出す事を止めてじっと見つめた。
「これが済めば、この土地から人間は出て行くと約束します。どうか……」
そう行って手を地に着けて頭を下げるものだから、従ってやろうと思った。
小娘は今にも泣かん勢いであったのでそうするしかなかったのだ。
そうして、眠る振りをした途端である。
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