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「だから、どうしたんだ、ってさっきも訊いたろ」 なんとなく、なんとなく。 耐えられなくて。 すぐに哲の部屋に、行った。 それはもう、転がるように。 「…な……なんでもない」 ちょうど、部屋着に着替え終わった所なのか、さっきまで着ていたシャツを手に持ったままの哲に、抱き付いて。 こんな“なんでもない”があるか、と。 頭ではわかっていても。 どうにもこうにも、怖かった。 うちは、一階が倉庫で。 普通の二階建て家屋より、若干高さがある。 ベランダは、工場に面していて。 人通りは少ないけれど、全く目がない訳でも、ない。 「………蜜?」 必死に流そうとした恐怖は、吐き気となって、指先を冷たく震わせる。 その、私の手を。 引きつれた傷痕のある手が、強く、握った。 .
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