こっくろーちんぐ

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 駅から徒歩40分のボロアパートで念願の一人暮らしを始めてから3日目の朝、俺は誰かが家のシャワーを使っている音で目を覚ました。  家に盗られる物なんて無いから泥棒じゃないだろうし、家族にはこの家の住所を教えていない。  引っ越しを手伝ってくれた友人達も家の2週間分の食料を食い尽くして昨日帰ったし、もう奴が来たのかな。 「ふんふふ~ん」  そーっと風呂場の扉を開けると、予想通り1人の少女がシャワーを浴びていた。  短い黒髪に、2本だけ長い前髪が揺れるあどけない顔、気持ち膨らんだだけの胸。  うん、テレビでも見た通りだ、間違いないな。 「うふふ、シャワーから出たら、さっき見つけたカップ麺の残りを・・・え?」  俺は黙ったまま、丸めた新聞紙で自分の手の平をポンポンと叩いた。  この子とそのお仲間にはコイツかスリッパが1番だぜ。 「ふぇ!?さっきまで寝てたのに!?えっと、あ、あの~」 「ん?何?」 「もしかして、それでぶとうとか・・・考えてます?」 「うん。そりゃーもう、引っ越しと2日間に渡るどんちゃん騒ぎの疲れを微塵も感じさせないつもりだよ」 「えぇぇぇ!?あのあの、そこを見逃してくれたりとか・・・」 「見逃したらまた来るでしょ?」 「もう来ませんから!このとーり!」  深々と頭を下げた少女、最近発見された、お湯を浴びると人間そっくりな姿になる新種のゴキブリを見て、俺はとりあえず手に持っていた新聞紙を放り投げた。  例えその正体がゴキブリだとしても、この子の頭を新聞紙でフルスイングするのは余りにかわいそうだ。  と言うより、年下好きの俺としては今すぐ抱き着きたい位さ。 「わぁ!ありがとうございます!」 「ま、こうやってお湯を浴びてる分には可愛いしね」 「え?」 「何でもない。それより、シャワー出たら何か食べる?・・・作るよ?」 「良いんですか!?」 「うん。その代わり、ね・・・ウフフフフ」 「な、なんか怖いんですが・・・」 「ベツニヤマシイコトカンガエテナイカラアンシンシナサイ」 「そーですか・・・?あ、ではでは、私もお料理手伝います!」 「そう?んじゃ宜しく。あ、手・・・と言うか、全身よく洗って来てね」 「はーい!」  とりあえず浴室を出た俺は、大急ぎで部屋の片付ける事にした。
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