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◆◇◆◇◆◇
その⑫
目が覚めると、土の中に埋められている事が、すぐにわかった。
埋められている時、まだ、かすかに意識があったのだ。
穴はさほど深くない。
とたん、激痛が走る。
また気を失った…
何度かそれを繰り返し、ようやく穴から這い出した。
浦島は町から逃げ出した。
足を引きずりながら…
◇◆◇◆◇◆
浮浪者のような浦島は、小屋に入った。
誰もいないことを確認すると、家中を物色し始めた。
長年の逃亡生活の技だ。
棚の奥から小さな箱を見つけ出した。
無表情の浦島が、フタを開けると、ホコリが煙りのように舞った。
鏡だ…
そこには、ヒゲも髪も真っ白な、薄汚れた老人が、浦島をじっと見つめているだけだった。
-終わり-
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