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◆◇◆◇◆◇
その⑨
次の朝、桃太郎は家を出た。
シズエは、持ちきれないほどのきびだんごを風呂敷に包み、桃太郎に渡した。
山を下りる桃太郎は、途中で、犬を連れたサル吉と出会った。
お互い面識はない。
だが、サル吉は桃太郎の存在をもちろん知っていた。
(乙姫の子か…大きくなったもんだ…)
「山のじいさんとこの息子だろう?お出かけかい?」
声をかけてみた。
「はい、これから鬼が島に渡って、商売しようと思ってます。おじさんは?」
「…わしは…おまえの本当の父と母を知っている…」
サル吉は、自分でもびっくりする言葉を返した。
「えっ?!…そうですか…
でも、今は知りたくありません!
山のじいちゃんとばあちゃんが、立派に育ててくれましたから…」
「わしも一緒に行っていいかのう…?」
またまた、予想していない言葉が出た。
「…おじさん…悪い人じゃなさそうだし、手伝ってくれる?
そしていつか、おれが成功したら…おれの両親の事、教えてくれる…?」
(お前の父はおれが殺した)
など、とても言えない。
「わしは、お前を助ける責任があるんじゃ…」
「それじゃ行こう!
ん!?その犬も連れてくの?」
リードを持っている事すら忘れるほど、サル吉は興奮していた。
「いいかね、連れていっても…?」
(もう、組には戻るまい…この子にわしの余生を捧げよう!)
ふたりは山を下りた。
フェリー乗り場の入口で、小腹の空いたサル吉が焼鳥を買ってきた。
こうして、桃太郎とサル吉と犬は焼鳥ときびだんごを持って、鬼が島へ向かった。
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