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通されたのは、客間のようだった。
それなりの調度品が並び、依頼人の地位が想像出来る。
「さて、今回諸君が護衛するのは、司法組織で活躍なさるドーチェ氏だ」
仕事をする中で、世の中の情勢を知るのはとても大事な事だ。
それを怠る事で、命すら落とし兼ねないからな。
ドーチェ、司法組織の幹部の一人である。
活躍はそこそこ。その癖、次期総指揮官の椅子を狙っていると云う。
「もうすぐ盛大なミサが開かれるのは知っている筈だ」
そう。サイにいくつかある教会の中で、建築何百年か、と云う事で盛大なミサが開かれる事になっている教会がある。出席者は各組織の幹部から総指揮官、一般人まで実に大勢の者が参加する事になっている。
「警備の方は完璧なんじゃないのか?あのグラオーグ総指揮官も参加するのだから」
俺以外の奴が言った。
確かに、仮にも国の頭である総指揮官が参加するのだ。生半可な警備ではない筈だ。
「そうだが、安心するまでにはいかないのだよ」
ふ、とダークスーツは口角を吊り上げる。
「中に連れて行ける護衛は最高で2人。此処に居るのは5人。誰を連れて行って、残りはどーするんだ?」
「よく調べてあるな。その通りだ。そこで、送迎は全員で護衛に当たり、ミサの最中は私と君達の中で1人決めて貰おう」
チラリとダークスーツは俺を見るが、冗談じゃねぇ。
「このミサに乗じて『片翼の堕天使』が動くと云う情報もある。だが、俺は遠慮するぜ?信心深くもねぇし、教会の中じゃ気分が乗らねぇからな。俺は送迎だけ、護衛に当たる」
「中々の情報網だな…」
ダークスーツと他の護衛メンバーは軽く目を見開いた。
『片翼の堕天使』、聖職者を気取った奴らで、先日構成員を一人、始末した。
計画の情報が本当か否か、確認の為でもあった。
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