舞台は。

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軽くミーティングを済ませ、帰路につく。 『片翼の堕天使』の目的はたかが知れている。   途中、携帯が鳴った。 画面表示は依頼人ドーチェの護衛。 「はい、何か用事ですか?」   「いや、優秀な護衛候補が居ると聞いてね、話してみたくなったんだよ」   相手はダークスーツではなく、依頼人、ドーチェ本人だった。   「優秀な…、ですか?買い被りですよ。俺は優秀なんかじゃない」   一瞬、脳裏を過ぎる光景――― 染まる掌、 虚ろな光り。   「謙遜するものじゃない。…本題だが、」   ドーチェの言葉でハッとする。   ―――嫌な記憶だ。   「…本題?何ですか?ミサの最中の護衛なら決まったでしょう?俺より年齢、そういう仕事の経験が長い奴でしょう?」   「はははは、敵わんなぁ。出来れば君に直接会ってみたかったが…」   冗談キツイぜ。   「いえ、こんな小僧に貴方みたいな人が軽々しく会うもんじゃないでしょう?」   本当の事だが、俺にとっちゃ、お偉いさんと謁見する事なんかどうでもいい。   「どうだね?今からでも会おうじゃないか。会うか会わないかなんて、私の意志だ。それに、今会って親交を深めておいて、損は無い。将来的にもね」   何かを含んだかのような物言い。 俺はそれを気にもとめず、スルーする。   「いいえ、遠慮します。予定も入ってますから」   何とか無難な方向へ持っていく。   「……そうか」   少し、苛立った口調。 ま、気にしないけどね。   「それでは、失礼します」    電話を切ると、新たに着信アリ。 表示はある所から。     「へいへい、こちら『死神』」   冗談めいた口調で、俺は電話に出た。   .
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