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交通整備された道路を、黒塗りの一台の車が走る。
目立たないようにしているその車内には、この国の頭である総指揮官グラオーグが乗って居た。
「流石に混んでいるな」
低く、渋いが、どこか優しさを孕んだ声。
「仕方ありません。盛大なミサですから。それに、貴方様に会う目的で来る方々もいらっしゃる筈ですから」
そのグラオーグの声に返事を返す声も、また優しい。
「しかし…本当に私一人だけの護衛で大丈夫なのですか?隊員は他にも居ますのに……」
グラオーグに返事をしたのは、漆黒の制服に身を包んだ、長身の男性。
銀に近い長い白髪を、首の後ろで一つに束ね流している。
「その必要はない。君達『血まみれの天使』は切り札だからね。そうホイホイ担ぎ出さないよ」
そう言って、グラオーグは微笑んだ。
『血まみれの天使』、グラオーグ直属の特殊戦闘部隊である。
ありとあらゆる戦闘、武器の扱い、戦略に長けた者だけを集めた部隊だ。隊員総数は30人。
隊員は漆黒の制服を纏い、胸に『血まみれの天使』が彫られたバッチを付けている。
『血まみれの天使』とは、この国、サイに伝わる神話に出て来る天使から取っている。
他にも、神話から名を借りた部隊はあるが、『血まみれの天使』は神話でもそうだが、その頂点に立つ。
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