よぎる過去。

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その頃は、ただ戦闘技術を叩き込まれていた。 そりゃスパルタだった。 だがそのお陰で、今の俺は居る。   ―――染まった掌、涙は無い。 痛いくらいの紅い静寂に、幼かった俺は慟哭した。   物言わぬ、まだ完全に熱が逃げていない、紅い肉。 代わりに、俺の掌は熱かった。 息を乱し、光りを宿さぬ目を見詰める。 ただ、反射だった。 信頼していた者が、自分の手により、死者と化した。いくら咄嗟の行動だったとしても。 俺は、6歳ですでに『死神』だった。   「……ん、」   微かに動く気配に、俺は歩みを止めた。   「ぐだぐだ、だな」   空回りする、過去を考える俺。 過ぎた事は、どうにもならない。   『死神』なら、『死神』らしく。 狩ろうじゃないか、罪人を。   ザワザワと、動き出す気配が数を増す。 ズルズルと考えている暇は無いようだ。   .
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