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日の光を通し、大理石の床へと色とりどりの模様を写し出す、ステンドグラス。
控え目に、聖歌を伴奏するパイプオルガンの音色が厳かな空気を柔らかいものにしている。
ここは国でも屈指の教会だ。
広大な敷地と、壮大な造りの教会で、歴史も古い。
そんな教会、その内部にひっそりとある、懺悔室。
告白者と聖職者を隔てる、互いの顔が見えないように造られた木製の格子。
薄く光が差し込む、決して広いとは言えない部屋。
そこにある告白者の椅子に、俺は静かに腰を下ろしていた。
小さく軋んだ音で、シスターか神父、とにかく、どちらかの聖職者が入って来たのが判った。
「こんにちは」
優しい、低い声音で神父という事が判る、
「…今日和」
挨拶を返すと、神父が苦笑した。
「緊張なさらず、告白なさい。主は全て解ってらっしゃるから」
その言葉に、俺の唇は緩やかな弧を描いた。
両手を腰に回し、それを握り、指を掛ける。
「……じゃあ遠慮なく。あんたは神の事をどう思う?」
「…全ての民を愛し、見守っています我等が父です」
俺の不遜な言葉遣いの問いに、神父は若干声のトーンを落とすだけで、飽くまで優しく答える。
「全ての民……ねぇ。じゃあ、罪人はどうなるんだ?」
「然べき罪を償うべく、主は道を示して下さります」
神父は静かに答えた。
聖職者として、完璧な答えだろう。
俺は立ち上がり、腰からそれを引き抜き、構えた。
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