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静かに聖歌が始まり、ミサが始まった。
グラオーグは、並んだ長椅子の最前列、祭壇が良く見える所に座っていた。
『血まみれの天使』の部隊長は、壁際に控え、ミサを見守っている。
「指揮官、御気分はいかがですか?」
「特に何もない。心配有難う、ドーチェ君」
グラオーグの隣に、ドーチェは座っていた。
さりげなく、グラオーグに話し掛け、微笑を浮かべる。
「この教会も古いですなぁ…」
「そうだな。だが、古いが素晴らしい教会だ」
ドーチェは天井を仰ぎ、言う。
祭壇では、司祭が登場し、聖書を広げている。
「古さばかりを讃えていても、何も生まれない……。そう思いませんか、指揮官?」
シスターや神父が司祭の周りに集まり、聖歌隊も集合する。
「そうだが、古いものから得るものもある」
グラオーグは祭壇から視線を外さず、ドーチェの問いに答える。
「ですが、そろそろ新しい風も必要でしょう?」
ドーチェが、口端を吊り上げ、グラオーグに視線を移す。
祭壇では司祭が、聖書を朗読し始めた。
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