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「私の命令が聞けないかね?」
笑いを含んだ、無線越しのグラオーグの声に、部隊長は溜め息を着いた。
グラオーグは迷いがなければ、自分の意志を貫き通す。
それはグラオーグが考え抜いた意志故(ゆえ)に、間違いはない。
仮に間違っていても、すぐに手が打てる。
「我が儘をおっしゃらないで下さい……」
「我が儘なものか。私以外に、何人の人間が此処に居ると思っているのかね?今、君が連絡しなければ、取り返しの着かない事に成り兼ねないと思うがね?」
「私の部員は、そのような事はやらかしません」
頑として、自分の意志を曲げないグラオーグ。
部隊長は額に手を当てたくなるのを堪え、必死にグラオーグを説得する。
「グラオーグ総指揮官…」
「命令だ。今すぐ外へ出て、連絡を着けたまえ」
有無を言わせぬ、グラオーグの声。
その声は無線越しで、決して大きいものでもなければ、強い調子でもない。
無線越しの小さな声だが、逆らう事を許さない、そんな声だ。
「何度も言うが、心配はいらん。『味方』もいるからね」
「……『味方』?」
部隊長は首を傾げた。
助っ人がいるなら、護衛である自分に連絡が来ていない事は有り得ないからだ。
「指揮官…」
「早くしたまえ。出れなくなる」
部隊長は一瞬躊躇したが、素早く出口へ向かい、歩き出した。
「……彼はどうしたのですかな?」
ドーチェが、部隊長の動きに気付き、グラオーグに問う。
「何、部隊からの連絡だ。少しの間離れていても、問題はないだろう」
「……そうですね」
ドーチェの顔が、ニヤリと歪んだ。
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