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悲鳴が響き、パニックが巻き起こる。
司祭は不愉快そうに眉をしかめ、自分の周囲に居たシスターや神父に視線だけで命令を下した。
入口や窓といった、外と通じる場所を固めさせたのだ。
一連の流れを見て、グラオーグが口を開いた。
「………君達にメリットは無いと思うがね?」
冷めた視線を司祭に向け、グラオーグは言う。
柔和な空気が、一変していた。
「言ったでしょう?新たな風をこの国に吹かせるのですよ。その為に、まずは準備が必要なのですよ」
騒ぐ者は女子供関係なく殴られ、黙るように命令され、ある者は撃たれ、苦痛に呻いていた。
強要された静寂が場を包む。
「私を殺したいのかね?」
「とんでもない!貴方にはやって頂く事がある。それまで殺しませんよ。今は、ね……」
クスクスと口元に手を添え、笑う司祭。
要はグラオーグを利用しようというのだ。
「それは良いとして、銃口を退かしてくれないか?不愉快でならない」
恐怖ではなく溜め息混じりのグラオーグの要求に、司祭はそれを鼻で笑い飛ばした。
「まさか!貴方は今、捕獲された血肉。私達に……、あの方に喰われるまで自由はありませんよ。それに、銃口を下げさせる決定権を持つのも、あの方です」
「……そうか。ならば」
グラオーグは優雅に脚を組むと、司祭に言った。
「許可が出たら、下ろしてもらおうか?」
邪笑を浮かべたグラオーグはそう言い、ちらりと神話の流れが描かれた壁の一部を見た。
そこだけ消されたかのような不自然なスペース。
グラオーグは自然な動作で、襟についたバッチを弾いた。
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