舞台は。

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仕事は数多。 雑用から情報収集、浮気調査も何でもあり。 ただ、俺は誰かの下につき、顎で使われるのを良しとしない。 だからもっぱら賞金首を狩っている。   今回の仕事は依頼によるもの。さる政治家の護衛だ。 俺的には好きではない政治家、ぶっちゃけ嫌いっつーことは内緒だ。 仕事はきっちりこなさなきゃいけないから文句は言わない。   いつものように、シャツの上にジャケットを着て、愛用の銃を2丁と愛用ではないが、銃をもう1丁装備。 弾倉も忘れない。 ナイフも装備して、バイクの鍵を持ち部屋を出る。   鍵を回し、エンジンを掛ける。 心地良い、重低音のエンジン音が響く。 俺のバイクはちょっと改造してあって、そこいらのバイクとは比べもんにならないくらいの速度が出る。 それに伴って車体も強化してある。 俺の業界の通り名『銀の死神』に因んで、禍々しくも美しい死神が描かれている。 走りながら闘れるように、自動運転機能も一応ついてる。 そんなバイクに跨がって、スタンドを上げ、走り出す。 勿論ノーヘルで。   走って暫くして、目的の建物が現れた。   「…ふぅ……」   億劫だ。 護衛は個人ではなく、何人かで依頼人を護る。 それは安心出来る保険のようなものだろうが、時として逆効果にも成り兼ねない。   「よく来てくれたね、諸君」   護衛メンバーであろう、ざっと20人程が一つの部屋に集められた。この中で一番若いのは俺だろう。 無機質な部屋で、壁も床もコンクリートが剥き出しだ。 何回か塗り替えた跡がある。   「さて、君達に依頼したはいいが、いかんせん人数が多い…」   喋っているのは、依頼人の専属護衛だろう。 逞しい体躯をダークスーツに包んでいる中年の男だ。   「勿論、優秀な人材を集めたつもりだ……」   狩る者の成績は政府が管理している。が、業界名まで管理してない。 則ち、依頼人は俺を『銀の死神』とは知らないだろう。
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