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その数日後、私は同じ文芸部である白浜都子に会いに行った。
基本的に夏休みにも塾やら、夏期講習やらで忙しい身な女の子だった。それがたまたま時間の空きが出来たという事で、一緒に昼食を取ることに事にした。
「それで、文芸の宿題はやったの?」
「えーと、まだ」
もともとおっとりした口調だが、今日は一段と歯切れが悪いなと考えていると、ふと自分の作品の事が思い浮かんだ。彼女には既に、私の今回のテーマがホラー短編集だという事は言ってある。それなら、少し協力して貰おう、と考えた。
「そういえば、なんか怖い話無い?」
「それって、個人部誌に乗せるやつ?」
「そうそう。なるべく体験談とかのほうが良いんだけど、中々実際に体験してる人って限られてくるから」
私がそう言えば、都子も考える素振りを見せた。そして不意に思い出した様な短い声を上げて、此方を見返してくる。どうやら、それらしいネタがあったらしい。鞄の中に入っていたメモ帳を取り出しながら、内心ワクワクしている事に気が付いた。都子はどうも嘘のつける性格ではない。と、言う事はこれから話される事も、きっと怖い怖くないに関わらず信憑性がある。少なくとも父や、私を歯牙にもかけない信憑性だろう。
「実はこの前、お母さんと一緒に、近所の親戚の家に遊びに行った時の事なんだけど…」
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