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その日は梅雨明けしたばかりの七月の上旬のためか、我慢できない程暑かった。
運動をしている訳でも無いのに汗ばむ肌を擦り、私は眼前に鎮座しているノートパソコンの画面を見詰める。そこに映し出された文書作成ソフトは全くの白紙で、思わずその綺麗さに深いため息が漏れた。
それは起動した10分前の状態から止まっていて、今すぐにでも放置スリープ状態にでも入るだろうと予測される。
しかし私にはこのパソコンで、夏休み中の宿題――高校の文芸部の課題小説を書かなければいけなかった。
テーマも枚数制限も無し。自分の好きな様に個人小説冊子を作る、説明だけならばとても簡単な宿題だ。
しかし、いざ話を書こうとソフトを立ち上げると、そう簡単には面白い話なんて浮かんでは来ない。
それは私の発想力が無いのも原因だが、真夏の暑さの癖に風一つ吹かない茹だる暑さにも非はある。
寧ろ自分の発想力よりもこの気温の方が、今の状況の原因であるのではないかとさえ思えてきた。
それならば、とクーラーの効いた両親の寝室に十五分程居座ってみたが大したアイディアは浮かばなかった。むしろ快適すぎて眠気さえ襲ってきた程だった。
それから自分の部屋に戻る途中で、本棚の角に足をぶつけた。
最悪だ。
弱り目に祟り目だとか、泣きっ面に蜂だとかいう諺がピッタリだと思う。
その突き抜ける様な足の激痛に、思わず床にしゃがみ込む。
すると涙の膜でぶれた視界には、本棚に詰め込まれている大量の漫画が映った。
ファンタジーにバトル、恋愛、そして私が何より惹かれたジャンルは
ホラー。
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