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地元の新聞にも記事が出たそうだ。
「火事を食い止め、お手柄」ってな。
そこで俺は不思議に思って、婆さん本人に聞いてみた。
「婆さん二階に寝てたんだよな?」
「えぇ。そうだよ」
「それって、爺さんの部屋から一番遠い所?」
「そう」
「あそこまで煙が入ってきたのか?一人で消せる火事でそんなに煙でるなんて、怖いな」
「いや?煙は来てないけど?」
さっき言った通り婆さんは警察に「煙に気が付いて、下に降りて行った」と話していたのに、その時は全く違う事を言った。
じゃあ何で火事に気が付いたんだと、聞けば曖昧な答えしか返って来ない。
変だろ?
しかも不思議な事はまだあってな、火事があってから婆さんが最初に電話した所ってどこだと思う?
警察?
それが違うんだな…ウチなんだよ。
「あの…爺さんが死んじゃったみたいなんだけど」ってな。
そうなって来ると、嫌な予感が頭を擡げてくる訳だ。
最初に電話が来たときは何の冗談かと思ったよ。
口調がやけに淡々としてるから、何かの悪戯かと思った程だ。
しかし今考えてみると、あれって死体が直ぐ近くにある状態で話してたって事だよな。
お前だったら、きっと泣きながら大慌てで隣の家にでも駆けこむだろうな。
それで俺は、爺さんは婆さんに殺されたんじゃないかって思った。
向かいの家のおばさんに聞いたんだが、火事前日に派手な喧嘩をしてたって聞いたし。
何だか爺さんの葬儀の時も、やけに金の事に拘ってる節があったからな。
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