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「こんばんは」
扉に付けられた鐘が鳴り、スーツ姿の孝祐くんが現れた。
「おう野上…って、仕事帰りかよ」
「残業が長引いて…そのまま来ました」
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めながらカウンターに鞄とジャケットを置き、キッチンを覗く。
私は小麦粉が飛んだら危ないからと、それらをテーブル席に運んだ。
店長と孝祐くんが話すのを、私は邪魔しない。
二人の中に、私が入るにはいささか勇気が必要だし、二人の会話に入っていける自信が無いのだ。
ジェネレーションギャップっていうやつね。
「「そんなに世代変わってねーだろ」」
二人共、いつの間にか私の心が読めるようになっている…。
冗談はさておき、孝祐くんがなぜ残業終わりに店長と新作スイーツの作業に加わっている理由は、発案が孝祐くんだからだ。
元々お菓子作りが得意な孝祐くんは、店長に勧められて三日で考えて来た。
そして店長が一ヶ月と少しをかけて材料を揃え、試作を作り続けている。
今日出来上がるのは、試作8号だ。
私も負けじと新作メニューを考える。
やっぱり、期間限定のものがいいと思うんだよね。
もうすぐ夏だし、夏みかんを使った何か…。
ゼリーはコンビニやスーパーにあるし、ババロア…とか?
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