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あ、《ニャン》だ。 忘れそうになっていたけれど、孝祐くんは特定の人には甘える俺ニャンさんだ。 前にゆっちゃんが言っていたことは合っていて、普段の孝祐くんは少し俺様な雰囲気をしているから忘れがちになりやすい。 二人きりになった時。 何気なく手が触れた時。 ふとした時に目が合った時。 突然電話が掛かってきた時。 こんな風に、誰が見ているか分からないのにおかしなことをする時。 「…今回は、ちょっとショックだ」 子供のようにふて腐れて、孝祐くんは私の肩に顔を埋める。 孝祐くんが言っているのは、さっきの試作品のことだ。 初めての挑戦に本気で取り組んでいるが故の、本音。 「なんでも上手くいったことなんてないけど、なんか……悔しい。 簡単に出来るって思ってなかったけどさ、荒木さんも手伝ってくれてるのに、完成に至れない自分の無力さに腹が立つ」 孝祐くんは、純粋だ。 だけど、本気で落ち込む孝祐くんに対して私はただ、子猫のようだと思うばかり。 「仕事しながら新作スイーツなんて、やってる時点ですごいよ」 子供をあやすように背中をポンポンと優しく叩く。 すると「お前の方が年下だろ」なんてぶつくさ言って、後頭部をわしづかみされた。 頭をわしづかみにされると、なんだかそのまま持ち上げられてしまうのではないか、なんて想像してしまう。
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