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ある日曜日の昼下がり。
男は仕事の取引先からの帰り道、ある街の通りを歩いていた。
空は晴天。
雲もなく綺麗な青色。
残念なのは、
高層ビルや建物に囲まれた狭い空であることだ。
男は歩きながら上を見ていた為に、通行人の女性とぶつかった。
その拍子に相手の荷物が落ちてしまったらしい。
急いで荷物を拾うのを手伝った。
拾ったものを渡す時に見た顔が、実に男の好みであった。
しめたとばかりに、お茶に誘った男。
―そこに下心がないといえば嘘である。むしろ下心満載であった―
しかし女性は急いでるのか一言お礼を言い立ち去った。
去っていく彼女の背中が小さくなっていくのをただ眺めた。
ため息を吐き顔を地面に向けた。
そこに落ちていたのは1箱の煙草。
「彼女の忘れ物だ」
何故か男は思った。
しかし、返そうにも彼女はもう行ってしまった。
彼女が戻ってくる事を少し期待して近くの喫茶店に入る男。
珈琲を頼み、無性に吸いたくなったその煙草に火をつけた。
甘い香りの煙が周りに広がる。
「珍しいなぁ……」
そう思っていると、
頼んだ珈琲が届いた。
持ってきた店員に礼を言い珈琲を飲んだ。
が、普段とは何か違う。
言い様の無い違和感があった。
男は気づいた。
「伝票をもらっていない。」
その旨を従業員に伝えた
しかし、
「お客様。
今日は無料でございます。珈琲一杯無料ですので、お気になさらず。」
と言って戻っていった。
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