おばあちゃんの影

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ふと目をやると… 落武者のように乱れた侍さんが 立っていました。 私に そこをどけと言わんばかりに目を睨み付けてくる。 私はヤバい… 咄嗟に手を合わせお経を唱えていました。 ビクともしない侍。 そんなにも前からいまだにウロウロと居座る侍ですもんね…… そう簡単にはいきません。 私はいったんお経をやめ 侍と話をしようと試みた。 『あの………私と話をしませんか? 『……………』 うんともすんとも答えてくれません。 『分かりました。では私の話を聞いてくれるだけでいいので』 『……………』 侍は黙ったまま私を見ていました。にらみながら… 『私はあなたのことを本当は見たくもありません。だから私はあなたを理解することもきっと出来ません。 だけど、やっぱりここにいるべきではないと思っています。 あなたの苦しみがここにいては解決にもなりません。 あなたが行くべき道はとっくに出来ています。 行くべき道に進むことがコワイのも分かる気がします。 でもあなたを待ってる人が家族があちらにはいるかもしれません。 行ってはみませんか?』 侍は黙ったままです。 無理だよなぁ…と半ば諦めかけていたとき! 『富・千』 そして一番大きな文字で 『椿』 『つば…き?』 私は急に頭が痛くなりました。 ふと侍を見ると 涙を流して… 私に背を向け 歩いて行ったのです。 その背中をじっと見つめていると 侍の過去が見えてきて だんだんと髪の毛も整いはじめ、ボロボロだった服も 形になってきて 立派な侍となっていました。 侍には妻がいて 病気がちだった子供さんがいました。
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