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『椿』
と名付けられたお子さんが
侍が戦から帰る前に亡くなられたのです。
侍はこの地をいつまでも離れることが出来なかったのです。
去り際に猫は侍の後ろをついていきました。
もしかしたら侍が当時飼っていた猫だったのかもしれません。
そんな侍の姿をみたおばあさんは泣いていました。
『あんなに恐そうな人だったのに
とても悲しい過去を持っていた人だったなんて………
ここで良ければいつでもおいでなさい…』
と。
私はおばあさんにも伝えました。
『おばあさん。おばあさんは素敵な人生でした?』
『えぇ…』
涙を流しながら笑っていました。とっても優しい顔をしたおばあさん。
『お孫さん、心配してますよ』
と伝えると
『ふふふ。心配しとるのは私の方よ。』
『…ふふふ』と私は笑うと
『分かっていますよ。もぅ行かなきゃいけないもんね。
あの子に温かいお茶でもいれてやってください』
え?真夏に……?と私は思いましたが、
『分かりました』
とだけ言って見送りました。
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