M-1後夜祭。

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「あー、泣いた」 M-1後、二人でのプチ宴会。 石田は泣きすぎて腫れた目をお絞りで冷やしながらそう呟いた。 「泣きすぎやねんお前」 俺はまだ一滴も涙を流してない。 「泣くやろ普通」 「まーなぁ」 ──優勝はNONSTYLE!! 俺かてそれが頭から離れへん。 そのくせに正直まだ実感無くて、ただこうやってちょっと落ち着くまで号泣する石田をフォローするんに必死やったから頭ん中ぐちゃぐちゃで。 もしかしたらすぐに泣いた石田の方が冷静なんかもしれん。 「‥優勝やて」 「嬉しい?」 石田がニヤニヤしながら聞いてくるから俺も口元が緩んだ。 「アホほど嬉しいよ」 「俺ら一位やで?」 「日本一やぞコラ」 言うてまた二人でケラケラ笑う。 二人だけやないとこんなアホな会話出来ひんよなぁ。 そう思うと、またなんとなく笑けてきて俺はビールに口をつけた。 ひとしきり笑って飲んだ後、石田がビールを追加注文してからしみじみと言うた。 「とうとう来たんやなぁ」 「おう」 ──見とけよ、そのうち日本に轟かしたるからなオッサン!! 大阪で、まだストリートやったときに小一時間漫才について説教してきたあのオッサンに、俺らは‥というか俺はそう啖呵切った。 ──NONSTYLEの名をなぁ!!! あのオッサンがどこの誰かも知らんから今どこで何してんのかは知らんけど、どっかで会うことがあったら言うてやりたい。 ざまぁみろ、って笑顔で。 「井上」 ふと、俺を見とった石田がふわりと優しい笑顔になった。
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