M-1後夜祭。

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「今は俺しかおらんから、ええんちゃう?」 石田がそんなことを言うのは多分油断した俺の表情が緩んどったから。 「‥何のことや?」 「別に耐えてもええですよ?」 あぁ、コイツはもう‥ 「ほんま腹立つ奴やな」 「失礼な。無理そうやから言うてあげてんのに」 へらへらしとるけど、何だかんだで多分気ぃ使ってくれてる。 ほんま、よー見てるわ。 「耐えれんねやったら別にええですけど」 目から、ため込んどった分の涙が溢れた。 「‥無理やわ」 決壊した涙腺が涙を止める機能を失ったかのように、俺はひたすらに泣いた。 「石田ぁ‥よかったなぁ‥」 「うん」 「ほんまに‥、よかった‥」 「うん」 念願のM-1優勝できてよかった。 今までの苦労が報われてよかった。 こうやって、俺を受け止めてくれる相方がいてよかった。 コイツの隣におれてよかった。 これから何があるんか分からんし、相方が石田でほんまによかったんかはまだ分からんけど、これだけは。 俺は今心から思う。 ──俺は幸せ者です。 *end*
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