暗号。

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「あーもう、わかったて」 アドレス帳から石田の携帯に電話をかける。 電話は三回のコールで繋がった。 「もしもし?」 『あ、どーも』 スイッチOFFの声にしてはテンションの高い声が返ってきた。 「なんやねん電話しろ電話しろて」 『いやー、暇やってん』 「はぁ?」 『やから、一人遊び』 「それがなんで電話しろになんねん」 『んー、自分の中で井上サンに電話させたらクリアーみたいな』 「意味分からんし」 『無事に井上サンから電話してきてくれたんで僕の勝ちです』 「そんなもん急用やて言うたら一発やんけ。どこにゲーム性があんねん」 『それじゃあおもろないやろー。最初に理不尽に酷いこと言うたら井上サンは腹立ってなかなか電話して来ぉへんやろなーとか、暗号にしたら負けず嫌いやから必死に解いてくるやろなー、とかさ。なかなか複雑な心理戦を一人で繰り広げたわけですよ』 「アホちゃうか」 『どうせ井上サンも暇してたんやろ。暇つぶし暇つぶし』 「ああ?失礼やなこっちは色々‥」 まぁ、暇やったか。 「‥色々あんねんからな」 『ふはっ、そうですか』 電話の向こうでケラケラ笑う声。 腹立つわぁ。 楽しかった?て嬉しそうに聞いてくる相方に、俺は一言で返した。 「アホ」 返答に満足したんかそういやね、と笑いながら言うてきた。 『最初の暗号にはちょっと意味があったんやで』 「最初?」 最初の暗号は死にますように、のあの暗号のはず。 「どうゆう意味や‥って」 切れとる。 「何やねんアイツ!!」 携帯を勢いよく閉じると同時に着信音が鳴った。 ちょっとびっくりして携帯を開くと"石田明"。 なんやねんと呟きつつメールを開く。 ‥ああ、今の自分にやけた顔してんねやろなぁ。 「‥ちょっと無理あるで」 from.石田明 お前は死ね ──You're shine. *end*
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