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しばらく無言のまま、初海は私の三歩ほど前を歩く。
初海はプライド高いから、一度決めたことは貫くだろう。
故に、私が謝るまでこのままか。
しゃーない。
謝ってやるか。
「はつ…――」
「あれぇ?初海くぅん?」
私が初海を呼ぼうとした声を、甘ったらしい間延びした声が遮った。
ふわふわの髪に、濃いメイク。
短いスカートに、じゃらじゃらアクセサリー。
派手な女の子が初海に媚びるようにくっつく。
「久しぶりぃ!私だよぉ、由美だよぉー!覚えてる?」
「おお、由美。久しぶりだなー」
私の三歩先で、2人が盛り上がる。
これじゃ、どっちが彼女だよって感じ。
周りから見たら、きっとあっちが彼女に見えるだろうな。
どっちが初海にお似合いか、なんて一目瞭然だし。
帰ろうか、と思って踵を返そうとしたとき。
「はい、初海くん!バレンタインのチョコぉ!余ったからあげるよー」
可愛くラッピングされた箱。
――ああ、今日バレンタインか。
鞄に入れていた手作りチョコの存在を忘れていた。
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