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「あ、あのね…!これ……頑張って作ったの……受け取ってくれる?」
「もちろん。ありがとう、嬉しいよ」
目の前で、俺の彼女が他の男に手作りのチョコを渡している。
しかも、俺はまだ彼女からチョコを貰っていないのだ。
屋上。
「くっそー!玖嵐の奴!ユズからチョコ貰ってヘラヘラしやがって!あー!くそ腹立つーっ!」
こうやって空に叫べば、なんとなく気分が軽くなる。
軽くなった気がするだけだが。
「あー子猿がキーキーうるせぇな。静かにしろよ、大和」
「んなっ!?梓!」
毒を吐かれ、さっきまで少し軽くなった気分がまた重くなる。
「子猿って……。てか、梓っていつも屋上にいるのな」
梓は、中学のときからそうだ。
何かと屋上にいる。
そのときは決まってパンとパックのジュースを手にしている。
今もそうだ。
クリームパンとコーヒー牛乳。
普段ならそれだけ。
でも、今日はその隣に紙袋。
「…まさか、梓。その紙袋…」
「ん?ああ……朝、女子から貰った。持ちきれなかったから紙袋も貰って入れといたんだ。それがどうした?」
そういえば、コイツ……結構ファンが多いんだよな。
毒舌で優等生で冷たくてイケメンで。
眼鏡と長い前髪のせいで見えないが、梓はかっこいい。
普通じゃない。
かっこいいんだ。
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