絶望の瞬間と新しい可能性

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「太陽、手伝ってー」 「うーい、ちょっと待ってろ」 私の部屋は二階にあるから、太陽に手伝ってもらって外に行くことになる。 だから太陽を一々呼ばなくちゃいけないんだ。 「天、ほいよ」 「ん、ありがと」 太陽は部屋の壁に立て掛けられた二本の松葉杖を取ると、私に手渡した。 そして私の膝を気遣いながら丸太のように担ぐと、太陽は階段を降りていった。 「よし、大丈夫か?天」 「うん、大丈夫。サンダルお願い」 私はサンダルを履いてから松葉杖をつきながら外に出た。 外に出るとすぐそこに公園がある。 そこには現在と違ってバスケットゴールなんか無いから、太陽が練習するのは両手のドリブルと、ボールをキープするために必要なハンドリング。 きっと太陽も私や母さんと同じフォワードになると思うから、今から練習させなきゃね。 誰にも負けない得点力を身に付け、太陽がなるのはチームの点取り屋。 なるっていうか、ならなきゃ私が許さない。 「ほら、太陽!ドリブルは叩くものじゃないんだってば!」 「はい!」 「目線は前!」 「うす!」 だから、練習に手加減なんかしないよ。 こうやって、太陽の練習に付き合うだけで、バスケを出来ないストレスは発散される。
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